民族のさまざまな生活の知恵や文化の形象をみせる約1万点にも及ぶ実物資料と、
映像や模型などの関連情報によって、総じて物質文化という形で結晶された
民族の生活文化の多様性はもちろん、その奥に共通する精神性や通文化性に触れることによって
全人類的なものの見方、考え方へのオリエンテーションをはかり、
さらに、文化人類学者たちが現実のフィールドワークで体験したと同質の発見や感動への
知的参加を促すことが人間博物館リトルワールド本館展示の構成意図といえる。

人間が長い時間かけてつくりあげてきた道具や象徴的な造形物など、ここに展示される
数々の文化的所産には、それ自体のもっている造形のおもしろさや美しさだけでなく、
それぞれの民族文化のもつ知性や感性のようなものまですべてそこに表象されている。
〈文化は人間を離れた力ではなく、人間によって創り出され、人間によって伝承されるものである。
しかし、文化は自然科学の概念と同じように、便利ではあるが、あくまで抽象である。
(中略)文化もそれ自体は見ることはできない。目に見えるのは、共通の慣習を守っている
人間集団の行為や器物にあらわれている規則性である。〉   C・クラックホーン       

こうした目に見えにくい文化の構造を情報の基盤としてデザインする
〈技術ゾーン〉の展示は、さまざまな自然環境に適応しながら、あらゆる地域で生活している
人間が、自らの生命を維持していくうえで、もっとも基本的な行為である
食物を手に入れるための諸技術と多様な生活文化をあきらかにし、
あわせて技術の発展と社会の発展との関係性を示す〈もの〉と〈もの〉、
(もの)と(こと)との体系として空間にプログラムすることである。

〈技術ゾーン〉の空間構成においては、スタジアム状のステージに文化の多様性を、
アーチの架構に文化の共通性を表象する。体験空間の動線と視線とに示唆を与えながらテーマを  
体現する象徴としての空間フレームが、建築内部に自立した単位空間を形成していく。
さらに、展示を構成するデザインの単位を立体的に積層することによって、
平面床からの視点、段状床より俯瞰する視点のそれぞれが、〈もの〉そのものの立体的な理解、
さらに〈もの〉と〈もの〉との体系的な理解を促すことができる。
同様に〈価値ゾーン〉の展示では、つねに自らの生きる意味を考え、世界を司る存在を求めてきた
人間の思考や行為の結晶といえる宗教や儀礼、芸能や芸術とよばれる
人間のいとなみにみられる価値観の共通性をあきらかにし、
それぞれの具体的なイメージ対応の多様性を精神文化の体系とし空間に展開する。

「生きる工夫・技術」「こころの宇宙・価値」という構成テーマに沿って、〈もの〉を含めた情報
の関連性を探り、それぞれ固体展示(文化の固有性)、比較展示(文化の共通性)、集中展示
(文化の多様性)として組み合わせるアレンジメントをかさね、デザインの構造がみいだされる。
こうして空間のメディアとなる〈もの〉に蓄積されている文化の構造のようなものや、
情報の体系などを表現していくことによって、〈もの〉の本質に内在する
インテリジェンスをひきだす知的パフォーマンスの空間としてミュージアムが位置づけられる。





事業・運営主体 財団法人リトルワールド プロデュース 名鉄エージェンシー+粟津潔
所在地 愛知県犬山市今井 AD・デザイン 田中俊行
建築面積 9,600F 展示設計 小塚秀忠 片山英治
延床面積 13,161F 企画構成 河合槙夫
建物構造 A棟:RC造・一部PC造 建築設計 日建設計
B棟・C棟:RC造 展示施工 日展・乃村工藝社共同企業体
完成年月 1983年3月




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