自然との共生という秩序を保ちつつ、さまざまな生産行為と関りながら科学技術を文化へと
昇華させてきた日本の科学技術の生成と発展を透視すると、3つの特徴的な視点と時代が見えてくる。
西洋の科学技術をどのような〈契機〉のもとに受け入れたか、またそれを受容し

成熟させた〈基盤〉は何か。さらに今日の高度な科学技術社会を見るに至ったその科学技術には

どんな〈特質〉があるのか、といった視点である。こうした構成の主題を、ドラスティックな

動線計画と空間構成によって効果的に印象づけるために、西洋科学のインパクトを示す「近代」から

出発し、つぎのゾーンでその成功への基盤をなした「中近世」における技術と文化の成熟を俯瞰し、
さらに生活文化のなかに実りをもたらした「現代」の科学技術へと結構させる。

西洋の科学技術の積極的な受容と普及のありさまを実証する「近代」を“技術と自立”という
テーマのもとに、歴史館の導入部を力動感のあるファクトリー空間として位置づける。

そのアプローチには、富岡製糸所に設置されたブリューナーエンジンの動態展示と、

R.Fトレビシックの設計指導により完成した国産第一号機関車の製造場面の復元によって、

日本人と西洋の科学技術との出会いを構成する。

歴史館の中核部には、伝統技術の成熟と生活文化の原形について展望する「中近世」を

“鉄と稻”というテーマのもとに抱擁感のあるオーディトリアム空間として位置づける。

その象徴として、良質な鋼の生産を可能にした〈高殿たたら〉の機能・構造を復元し、また、農業
生産の増大をもたらした水管理技術を見せる〈三連水車と揚水機〉を実験考古学的に動態復元する。

このふたつの実寸大造形物によって、“つくる技術・鉄”と“育てる技術・稻”の
中世における革新を空間に据える。さらに、技術を風土や自然と共生させる科学の萌芽、

精緻で入念な技術的感性、科学技術を文化化していく独創性といった、
実物からではその本質を伝えにくい情報は、科学的な視点で捉えた映像によってデザインする。
日本型の科学技術の特質を、生活思想と結合した文化性にとらえ、

焦点をあてる「現代」を“科学と実り”というテーマのもとに

歴史館の結構部を開放感のあるミュージアム空間として位置づける。

このゾーンには、日本人の生活観・価値観の中に本質的に見られる「凝縮」と「拡充」の感性に

注目し、それぞれの意味を原理的に示す〈坪庭と二畳茶室〉と〈江戸の町家の構造〉の

二つの空間概念を抽象化した造形を、対位させる。

それらを軸に、こうした感性から生み出された伝統的な生活技術の所産と、今日の先端技術である

エレクトロニクスの成果とを比較展示することによって、
現代の科学技術に結実した日本的生活文化という特質を示す。

日本の科学技術を歴史的に透視する“技術と自立”“鉄と稻”“科学と実り”という
“構成の主題”を、参加と体感の触発装置となる
スペースメディアデザインが、空間へ環境へと体現させる。





事業・運営主体 国際科学技術博覧会協会 プロデュース 泉眞也氏
所在地  茨城県筑波市 AD・デザイン 田中俊行+空環計画研究所
敷地面積(歴史館エリア) 17,300F 展示設計 展示科学
建築面積 8,452F 大映像演出 勅使河原宏・瀬川順一
延床面積 10,930F 造形アート 伊藤隆道
展示空間(含、屋外展示) 6,054F 建築設計監理 久米建築事務所
建物構造 地上2階建 S造 展示施工 乃村工藝社・丹青社・日展/他
完成年月 1985年3月〜9月




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